ベッド・P・ナンダ/池田大作
【文明間対話】『インドの精神――仏教とヒンズー教』
東洋哲学研究所 2005年5月3日 \1,800+税
帯より(表)
平和のために宗教は今、何ができるか?
「根源的に考え」「現実的に提言する」
同(裏)
世界法律家教会 ナンダ名誉会長
インドの精神は「全人類は一つの家族である」と主張します。たとえば家族のだれかに不幸があれば、一家全員が悲嘆にくれるでしょう。同様に、世界のどこかで人間が苦しんでいるならば、われわれすべてが苦しむという精神です。現代の課題もまた、「国益」以上に「人類益」を志向した地球社会の建設なのです。
創価学会インタナショナル 池田会長
インドの精神とは「非暴力と慈悲の精神」であり「自然との共生の精神」であり「他者への寛容の精神」です。どれもが、平和な地球社会のために不可欠の精神です。生命は絶対に尊厳です。暴力と報復の悪循環≠断ち切らねばなりません。人類はみな、お互いの仏性あるいは神性をたたえ合わねばなりません。そうすれば、世界は一変することでしよう。
【目次】
はじめに……池田大作―― 1
序……ベッド・P・ナンダ―― 7
プロフィール(池田大作/ベッド・P・ナンダ)―― 12
序章「戦争の世紀」を生きて
1 人類の安全保障―― 35
国連中心に民衆の連帯/SGI(創価学会インタナショナル)の仏法運動
2 出会い―― 38
創価大学「第九」演奏会/デンバー大学訪問/創価学園生への期待
3 人生の思い出―― 44
故郷との別れ/母の慈愛、父の厳愛/「最高を目指せ」
4 心に残る恩師―― 54
「学生第一」の精神の淵源/学生たちと結んだ心の絆/十年にわたる「戸田大学」
5 感銘を受けた人物―― 62
ネルソン・マンデラ氏/マハトマ・ガンジー/「私は人間を信じる」
第1章 人類の平和・文化揺籃(ようらん)の地
1 世界最古の文明―― 71
近代合理思想をこえて/「人類は自然の一部」
2 ヒンズー教の中心的概念―― 75
西洋思想との基本的相違/偏狭な「人間中心主義」
3 「縁起」論が意味するもの―― 80
「相互依存性」の原理/「他者」のなかに「仏」をみる不軽菩薩
釈尊の出家の動機
4 多彩な文化を生んだ土壌―― 86
ナーランダ仏教寺院/紀元前七〇〇年ごろの大学/教育を基本とした生き方
5 古代インドの高等教育機関―― 94
思想のオリンピック/日蓮大聖人の「覚醒の対話」/「公正なる討論」の伝統
6 「内面的学問」の発達―― 101
最古の哲学詩「ヴェーダ」/学問の目的は「魂の解放」/「言葉の力」を尊崇(そんすう)
7 天文学と数学の発達―― 106
「引力の法則」も認識/「ゼロ」(0)の発見
8 医学「命の知識」―― 110
「脳外科手術」の伝承/病気の根本原因をさぐる
9 多元性こそインド文化の功績―― 114
「同苦する」精神/生きとし生けるものへの慈しみ/「智慧ある者」を尊敬
10 平和――人間性の開花―― 119
アショーカ王・ラーマ王の統治/非暴力主義と法華経/
「薬草喩品(やくそうゆほん)」が示す平等観
第2章 「宗教的生き方」とは@――ヒンズー教の視点から
1 中世以降のインド―― 127
幾世紀もの抑圧の歴史/「進歩の波」が止まる
ベールの下に隠れたヒンズー教/インド精神のルネサンス
2 人類最古層のヴェーダ聖典―― 134
二万以上の聖句/ヴューダンタ哲学「人間は本来、幸福」
3 神々と礼拝の形態―― 141
雷神は仏教で帝釈天(たいしゃくてん)に/他者のため、平和のために祈る
4 日常生活と一体の信仰―― 148
小さい「神と人との距離」/精神的価値を世界に刻印
5 「人生の目的」を説く―― 152
「幸福」を重層的に見る/欲望に支配された現代文明
6 四大目的の意義―― 157
「ダルマ」/「アルタ」/「力−マ」/「モークシャ」
相対的幸福と絶対的幸福/「貪瞋痴(とんじんち)の三毒」の克服
7 人生の四期――貪欲から離れる過程―― 167
「消費が美徳」の危うい時代/「聖なる貧者」を尊敬
8 「社会の倫理性」を高める計画―― 170
社会に奉仕する生き方/「富を分配せよ」と説く聖典
分け隔てのない社会/「世界の良心」がもつ宗教的感性
9 「精神革命」の世界的連帯を―― 176
物質至上主義をこえて/信仰心が「強さの支柱」
第3章 「宗教的生き方」とはA――仏教の視点から
1 社会の病理に挑む日蓮仏法―― 183
仏教は「逃避と瞑想(めいそう)の宗教」か/慈悲ゆえに「悪と戦う」
民衆のために仮名(かな)文字を使用/社会の大変革期に仏教が興隆
2 慈悲の実践に生きたブッダ―― 191
悟りの座を立つ/行動する仏教≠ノ希望/ヒンズー教と慈悲
「自己と他者は一体」の自覚/人類全体の魂を高める
3 「カルマ(業)」の思想―― 201
「運命」は変えられるか/悪業からの根源的な解放
4 「心を磨く」ライフ・スタイル―― 207
「内観」と「社会性」のバランス/「心は動揺し、ざわめく」/積むべきは「心の財」(たから)
5 「菩薩道」を現実化するために―― 215
「布施」の目的/「押しつけ」ではなく「引き出す」/漸進(ぜんしん)性――中道の現実主義
6 日本の宗教事情―― 223
奇妙な宗教遍歴=^自発的コミュニティーの崩壊/「形骸化(けいがいか)した宗教」ではなく
第4章 未来を開く「人間教育」
1 理想を追求する大学―― 233
「学生第一」の精神/最高峰の人材に≠ニ期待/象牙(ぞうげ)の塔≠ナはなく希望の塔≠ノ
2 教育者の資質―― 240
「教育は最高至難の芸術」/よき伝統が学生を育てる
3 アメリカ創価大学―― 246
学生寮が一等地に/「地球市民」育成が時代のニーズ/「世界を結ぶ」大学の使命
4 「文明間の対話」へ教育で貢献―― 254
「人道的競争」「地球民族主義」/必要な革命は「人間革命」
5 「智慧の人」「勇気の人」「慈悲の人」―― 259
教育の要(かなめ)は「人間主義」/教育危機の最大の原因/「知識を智慧と錯覚する」迷妄
6 精神的価値の復権―― 265
教師と生徒の人格的ふれ合い/「家庭のゆらぎ」「学校のゆらぎ」
家庭で学ぶ平和の文化=^教育の進歩が社会の進歩に
第5章 自他ともに輝く「人権の世紀」
1 「民衆と民衆」を結ぶ交流―― 275
日本の真の国際貢献
2 宗教が人権に果たす役割―― 278
「伝統の智慧」の普遍性/「法(ダルマ)」による幸福社会の実現
3 政治と宗教のあり方―― 283
ガンジーにおける政治と宗教/政教分離原則
ヒンズーの聖者・ヴィヴェーカーナンダ/宗教間対話の根本理念
4 世界人権宣言と国連のリーダーシップ―― 291
SGIの人権展/アタイデ氏との対談集/すべての国が達成すべき基準
5 国家主権から人間主権へ――人権運動の発展―― 296
ユース・コーゲンス(強行規範)/人権発展の三世代/人権理念の各地域ごとの展開
6 貧困撲滅(ぼくめつ)――人権享受(きょうじゅ)の絶対条件―― 302
ヤスパースの警告/「万人の幸福のための経済学」
7 欲望のコントロール―― 306
「人権教育のための世界プログラム」/菩薩の誓いを手本に/貪欲を制御する「倫理性」
第6章 「地球社会」創出への挑戦
1 主権国家体制と近代国際法―― 315
国際社会に「法秩序」が欠如/「国家の排他的主権」の優先
2 「人類益」「人類主権」へ発想の転換―― 530
国際法に「民衆の意思」を反映/「国家以外にも適用」の動き
3 新時代の潮流つくったNGO―― 323
国際刑事裁判所の誕生/人権問題でも重要な役割
4 権力と真正面から向き合う仏教者―― 328
大乗の大論師・竜樹/冷戦後の「NGOの台頭」/法華経に登場する菩薩群とNGO
5 核兵器の違法性――「世界法廷プロジェクト」―― 334
小グループで旗上げ/米ソの医師団が「反核」で結束/国際司法裁判所の見解
6 戸田城聖の原水爆禁止宣言―― 343
世界各地で「核の脅威展」/NGO「三つの課題」
7 NGOに求められる高い倫理性―― 347
権力という障害≠ノ言論で挑戦/菩薩の「四弘誓願(しぐせいがん)」
8 ソフト・パワーとしての国連の役割―― 352
主権国家の厚い壁/「軍事中心の安全保障」から脱却/国際法体系の整備
9 「人間の安全保障」へのアプローチ―― 357
国家の枠(わく)こえて人間の尊厳を護(まも)る
国連諸機関の多大な業績/東西対立の時代の国連
冷戦終結と国連の新たな役割/ガリ事務総長との対話
10 「対応の文化」から「予防の文化」へ―― 365
「紛争予防委員会」を提案/真の敵は「貧困、憎悪、非人間性」
11 「文明間対話」は未来への責任―― 370
ソフト・パワーの三要素/道理に従う「賢者の論理」
12 仏教が説く「慈悲に基づく対話」―― 374
悪と戦う人間愛/善意と智慧を結集する拠点/人間を信じぬく楽観主義
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